ブラームスの子守歌

面白かった小説、お気に入りのドラマ、心に響く映画などを考察したり感想を書いたり。

満身創痍系俳優ジャック・オコンネルの良さが分かる2作品を厳選。ぜひ推しの1人に加えてください。

 

ジャック・オコンネルが好きなんです

 

巷では「満身創痍系俳優」と言われるジャック・オコンネルをご存じでしょうか。なぜそういわれるかというと、窮地に追い込まれてボロボロになる出演作が多いからです。

 

日本で一番有名な彼の作品と言えば、一部から反日映画だとの声が相次いだ「アンブロークン 不屈の男」かと思います。あのアンジェリー・ナジョリーが監督を務めた作品ということでも話題になりました。

ストーリー
ジャック・オコンネル演じる主人公のルイス・ザンペリーニは陸上選手。1936年のベルリンオリンピックに5000m走者として出場し、驚異的な記録を残す。4年後の東京五輪に目標を定めるも、世界は戦争に突入。ルイスもアメリカ空軍に入隊する。

戦闘中、零戦の攻撃を受け爆撃機が墜落してしまう。45日間海を漂流した後ようやく陸地に辿り着いたが、そこは日本軍の支配下にあった。捕虜となった彼は、どんなに理不尽に痛めつけられようとも決して折れることなく、過酷な環境下を生き抜いていく……

実話ベースの映画です。

 

残念ながら私は見ておりません。予告だけは何度も見ました。推しとかいっておきながら初っ端から裏切ってすみません。

 

彼の出演作で一番おすすめしたいのは、「名もなき塀の中の王」です。

 

 

これを推したい!「名もなき塀の中の王」

 

キービジュアルとなる表紙のヤンキー感と少々センスに欠けた邦題とが相まって、潜在顧客を逃したものと考えられます。なんか言い方が鼻につきますがスルーしてください。

 

2013年に制作されたイギリス映画です。原題は”Starred Up”  はてぶろでスターを投げると一つずづ反映されますが、まさにそんな感じ。彼は「もう一つ星がついた」いや、「ついてしまった」わけです。

 

刑務所の専門用語でそれは、少年刑務所からの「昇格」を意味します。

 

あらすじ・みどころ

ストーリー

少年院での暴力的な行動を問題視された19歳の少年、ジャック・オコンネル演じるエリック・ラブ(本当にLove)が成人刑務所に移送されてくる所からスタート。そこにはなんと、実の父親が収監されています。「ここでは問題を起こすな」と言い含められますが、エリックは耳を貸さず。問題行動は止まりません。心理療法士や他の囚人とのグループセッションで少しずつ怒りのコントロールを覚え、生き方を学んでいくエリック。しかし彼を排除しようと忍び寄る影が……

 

迸る生命力 ー燃料は無尽蔵の怒り

暴力という情動に支配された19歳のエリック。ギラつく生命力はまさに、肉食獣のよう。ハリウッドの人間はだいたい歯並が綺麗に整ってるが、イギリスのダービー出身の彼の歯はちょっと尖っているので、余計にそれを感じる。

 

どれだけ傷つけられても踏みつけられても、生きる気力を奪われる環境でも、それでもやっぱり生きる方向にベクトルが向いている人間に、私はかなり強烈に惹かれます。

 

エリックが追い詰められているのはその大元が、自身が怒りの衝動をコントロールできないというところにあるのでこの場合は少し違うのですが。怒りという感情は、時として人生を前に突き動かす着火剤のように働きます。その火花が眩しい。

 

追い詰められた獣は戦うか諦めて死を受け入れるかのどちらかであるし、相手が圧倒的な強者だった場合は、抵抗せずにできるだけ少ない苦痛で終わらせたいと思うものですが、そういう状況にありながら全身全霊で抗う姿。そこに凄まじい生命力を感じます。

 

親子ドラマ

子供が19歳ともなれば、父親は立派な中年。髪には白髪が混じり、覇気も感じられない。何年も顔を見ていなかったとしても父親面はしたいし、自分の息子に同じ道だけは歩んで欲しくない。そんな思いが父にあるものの、親子のコミュニケーションは当然ながら上手くいかない。親の心、子知らず。子の心、親知らず。すれ違う2人が切ない。

 

 

脚本も演出も素晴らしい

舞台設定が巧妙で、次々と訪れるピンチにイベント感がなく、ストーリーとして自然なことも評価できる点の一つです。

 

フレームに切り取られたごく短い出来事の積み重ねで、刑務所内での生活の全体像を想像できてしまう。囚人や看守が立体的な厚みをもった人物となり、否応なしに世界観に引きずり込まれていく。

 

元刑務所を撮影地にしているというのもポイント。塗装が剥げひび割れた壁、何度もステップを踏まれたであろう鉄の階段。そこにある年月はそのままリアリティとなり、ドキュメンタリータッチの演出に深みを加えます。

出典:Google Map

外観はかなり立派です。北アイルランドに残る唯一のヴィクトリア朝時代の建物だそう。

 

このシーンが好き

好きな場面の一つに、

ベビーオイルをかぶり臨戦態勢をとるエリック

というのがあります。突入してくる看守に確保されないようにするための手段です。

 

自分にも床にもまんべんなく、まさに浴びるようにかぶります。そして膝を使って椅子を破壊。破片を両手に持ち、仁王立ちして構えます。少年院で数々の修羅場をくぐり抜けてきた猛者だなと一目で分かります。ヤバい奴です。

 

それに対してすぐさま砂で対策を講じる看守。ここにも彼らの日々の死闘が窺えます。

 

他にも紹介したい数々の名シーンがあるのですが…というか殆ど全てのシーンが好き。

 

 

レビューはあんまり

評価は半々で、

ごくごく真面目に生きてきたので、法を犯して刑務所に来た悪ガキは自業自得であり、フィクションでも見るに耐えず感情移入出来なかった

という旨の感想はいくつかありました。あとはバイオレンスなシーンが多いので苦手…といったもの。

 

実は私もバイオレンスムービーはあまり好みじゃない。刑務所にお世話になったことはないし、盗んだバイクで走り出したこともありませんが、最も好きな映画の一つとなってしまいました。

 

塀の中の王だけで長くなってしまった。困ったな…。

 

 

どうしよう厳選できない

 

ごめんなさい。話が違う。

ベルファスト71

出典:google map

黄色で囲った部分はイギリスの領土。ここが北アイルランドと言われる。×はベルファストの位置(ちなみに先ほど登場した刑務所は偶然ここにある)。統合に反対するアイルランドは分離独立を目指して戦った。

 

北アイルランド問題になじみが薄い我々には少々とっつきにくい映画かもしれません。ざっくりいうと、プロテスタント系のイギリス vs カトリック系のアイルランドの紛争です。それも民間人同士の血生臭い争いが1960年代後半から繰り広げられてきました。IRA(アイルランド共和国軍)という組織があるのですが、2001年に9.11が起こる前まではテロリストといえばIRAが主流でした。満身創痍になるジャック・オコンネルを堪能できますが、万人向けではないのが残念。アマプラ会員なら追加料金なしで見られます(2023年6月)。

 

マネーモンスター

こちらならどんな層でも楽しめそうです。ジョージ・クルーニージュリア・ロバーツが主演、監督はジョディ・フォスターがつとめたスリリングで豪華な作品です。金融商品を紹介する生番組に銃を持って乱入してくるヤバい奴がジャック・オコンネルです。ヒリヒリした緊迫感を味わえます。

 

炎の裁き

火事で3人の子供を失った父親役を演じるジャック・オコンネル。火事は放火であり、彼は意図的に自身の子を殺害したのだとして死刑宣告を受けてしまいます。冤罪事件を扱った、実話が元になった作品。

今のところ独占配信の状態で、残念ながらアマゾンプライムでは見られません。新規登録者は31日間無料なので、実質0円で楽しめました。

 

ジャングルランド

これならアマプラで見られます。2020年の比較的新しい作品です。もう詳細は一切省きます。地下ボクシング系の兄弟の絆系のロードムービー系のやつです。ジェントルで素敵な、満身創痍一歩手前のジャック・オコンネルが見られます。

 

気が付いてしまった

 

ジャック・オコンネルは日本で受けるような作品にはあまり恵まれていないことが判明しました。挫けずに布教していきたいです。

 

満身創痍にならなくても十分な演技力がある実力派ですが、なってこそ、更なる魅力を発揮するのです。その点を強調して終わりにしたいと思います。

 

ありがとうございました。

 

アマプラ会員なら無料です(2023年6月時点)